別冊

雪の用意(北越雪譜)2018/01/07 01:13

北越雪譜初編 巻之上
   越後湯沢 鈴木  牧之 編撰
   江  戸 京山人 百樹 刪定

 ○雪の用意(ようい)

 前(まへ)にいへるがごとく、雪降(ふら)んとするを量(はか)り、雪に損ぜられぬ為に屋上(やね)に修造(しゆざう)を加(くは)へ、梁(うつばり)・柱・廂(ひさし) 家の前の屋翼(ひさし)を里言に〔らうか〕といふ、すなはち廊架(らうか)なり 其外すべて居室に係る所力弱(ちからよはき)はこれを補(おぎな)ふ。雪に潰(つぶさ)れざる為也。庭樹(にはき)は大小に随(したが)ひ枝の曲(ま)ぐべきはまげて縛束(しばりつけ)、椙丸太(すぎまるた)又は竹を添へ、杖(つゑ)となして枝を強(つよ)からしむ。雪折(を)れをいとへば也。冬草の類(るゐ)は菰莚(こもむしろ)を以、覆ひ包む。井戸は小屋を懸(かけ)、厠(かはや)は雪中其物を荷(になは)しむべき備(そな)へをなす。雪中には一点の野菜もなければ、家内の人数(にんず)にしたがひて雪中の食料(しよくれう)を貯(たくは)ふ。あたゝかなるやうに土中にうづめ、又はわらにつゝみ、桶に入れてこほらざらしむ。其外雪の用意に種々(しゅ/”\)の造作をなす事筆に尽しがたし。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.8~12)

 ・・・

 ○雪の用意(ようい)

|| 前(まへ)にいへるがごとく、雪降(ふら)んとするを量(はか)り、雪に損ぜられぬ為に屋上(やね)に修造(しゆざう)を加(くは)へ、梁(うつばり)・柱・廂(ひさし) 家の前の屋翼(ひさし)を里言に〔らうか〕といふ、すなはち廊架(らうか)なり 其外すべて居室に係る所力弱(ちからよはき)はこれを補(おぎな)ふ。雪に潰(つぶさ)れざる為也。

■雪が降りそうな様子を見て、雪害を最小化するための色々の工夫をします。
家屋は修繕をします。梁や柱や庇などです。
家の前の庇のことを、越後ではろうか(廊架)といいます。雁木のことですね。
その他全ての家屋に関わる場所で、弱い個所は補強をします。
雪に潰されないようにする為です。

||庭樹(にはき)は大小に随(したが)ひ枝の曲(ま)ぐべきはまげて縛束(しばりつけ)、【椙丸太(すぎまるた)】又は竹を添へ、杖(つゑ)となして枝を強(つよ)からしむ。【雪折(を)れ】をいとへば也。

■庭木は、それぞれの大きさによって、枝を寄せても良いものは曲げて縄で縛り付けます。
細木(杉丸太)や竹を添えて、雪折れしないように支えの杖として枝が折れないようにします。

||冬草の類(るゐ)は菰莚(こもむしろ)を以、覆ひ包む。

■また、小木や枯れない植物などには、コモやムシロで包んで覆いをします。

||井戸は小屋を懸(かけ)、厠(かはや)は雪中其物を荷(になは)しむべき備(そな)へをなす。

■井戸には小屋掛けをします。便所は冬の間に便桶が一杯になってしまわないように、汲み取りなどをして準備しておきます。

||雪中には一点の野菜もなければ、家内の人数(にんず)にしたがひて雪中の食料(しよくれう)を貯(たくは)ふ。

■雪の冬の間は、畑で野菜の採取も出来ません。その家で冬季間に食いつなげるだけの食料を貯えておきます。

||あたゝかなるやうに土中にうづめ、又はわらにつゝみ、桶に入れてこほらざらしむ。

■暖気を保持するように地中に埋めたり、または藁で包んで桶等に保存して凍結しないようにします。

||其外雪の用意に種々(しゅ/”\)の造作をなす事筆に尽しがたし。

■そのほか、冬の間中の生活の為の準備作業は、とても書ききれるものではありません。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yebijin.asablo.jp/blog/2018/01/07/8764420/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

別冊