別冊

筍:007:たけのこ話2019/01/14 21:01




【筍:007:たけのこ話】#大多喜 #竹の子

正月休みに、訪問して自分で掘ってみる予定でしたが、足手まといになるので、今回は断られてしまいました(笑)。「雨が降らないので出が悪い」というのに、10本送られてきました。

大きいものでも大抵は200~300グラム。時には、600グラムほどの筍も収穫できる。
冬の季節の筍は、上根(うわね)といって竹の本来の地下茎では無いところ(根の支枝のような場所)から生えるのだそうです。
竹林は竹の枯葉に覆われているので、筍の芽も地上には出ていない。
枯葉(地面)がほんの少し盛り上がったような場所を足で擦ってみると堅い感触が判るのです。
だから堀上げてみるまで大きさもわからないのです。冬の筍は足(感触)で探す。

春3月以降になると、本根(ほんね)といって、店に並べてあるような大きな筍が生えてきます。
この大きさの季節には、じっと目を凝らすと、地上にほんの少しだけ芽が見えてきます。

facebookでコメントのあった、トモダチに予告無しで送りつけてみることにした(笑)。
2本は上根(秋子、アキコとかもいう)では普通の大きさ。アク抜きをしないで、そのまま茹でて食べられます。
土のついた葉だけを剥いで、茹でればよいでしょう。

本当かどうかは、小さめの筍を刺身にして食べてみれば判ります。エグミが無いのです。
内側の柔らかい葉の上部も刺身のツマのようにして食べるのだそうです。

収穫されたのは1月13日、あまり長期間そのままにしておくと、エグミも出てくるかも。

タケノコ茹で。
ちなみに、源さんの奥様は、フツーの筍の場合は、以下のような茹で方をお勧めしている。

 1.米の研ぎ汁とタカの爪1本。
 2.または、米を一掴みと一緒に煮る。
 3.または、糠(ぬか)が入ればよい。重曹でもよい。

「源さん」の事は、後で(^^;


筍:006:たけのこ話2019/01/13 19:50

【筍:006:たけのこ話】#大多喜 #竹の子

ことし(2018年)は、今のところ獣害も無いらしい。
普段の一番の被害は、猪(いのしし)。鹿(きょん)も猿もいる。熊はいない。

猪は、タケノコの先が地上に出る前から荒らしてくる。
鹿と猿には地上にタケノコが出てくると、被害にあう。
鹿は、地上部に出た部分の上部だけを喰い、タケノコの中の人が食する部分は残す、皮の部分が好きらしい。
猿は、ホンの少し出た頂上部だけを傷つける。
つまり猪のように体の構造で掘削する能力が無いのである、それは人も同じ。
人は、道具が無いと何にも出来ない生き物でもあるなぁ。



筍:005:たけのこ話2018/11/26 01:09


本日の収穫。4時間ほどでこの倍ほどを掘出す。

このうち、5本くらいは売り物にもなるという(笑)。
今の時期(11月・12月)に生えるモノは、本根(ホンネ)から出てくるタケノコではない。
秋子(あきこ)というレア物。



小さいものを皮を剥いてそのまま食べてみた。
えぐみは全く無い。生のままで歯ざわりはさくさく、味は生栗のような味。







千葉県夷隅郡大多喜町某所山中(18/11/25)



エビネ

この山には、珍しい蘭が複数種自生しているらしい。
これは、エビネという種類とか。
他に、2・3種類の名前をメモした、シュンラン・フクラン。。。
が、聞き違いのままのメモかもしれない。
見る人が見れば判ると思われるので、載せておいてみます(笑)。

筍:004:たけのこ話2018/11/23 20:43

【筍:004:たけのこ話】#大多喜 #竹の子

25日に向けて準備を始める。
あとは、軍手と腕抜きを準備。

facebook 投稿への〔いいね!〕の様子で様子を見ると、勝手に送りつけても迷惑ではなさそうな人も数人はいそうだ。
そこそこの収穫があればの話ではある(笑)。
忘れた頃に、送りつけられてもよい人も連絡されたし。
とりあえず贈呈です、よろしかったら次のフェーズに(((^^;こら!






筍:003:たけのこ話2018/11/22 22:03

筍は春から夏のモノでもない。冬にも出てくるのです。クリスマス前にも生のタケノコを食すことが出来るのである。

電話があった。

「11月11日には出てきた。暖冬で早い。400グラムもある。普段のウワネだと大きいものでも300グラム程度。」

そのタケノコ採りに25日に同行させていただく事にした。
どれほどの本数が取れるかは、わからない。

どんなものか、ご興味のある方は、連絡されたし。



【筍:002:竹の子は隔年結実】#大多喜 #竹の子2018/11/22 21:50

千葉県夷隅郡大多喜町某所山中(18/09/23)
山の木の実は、毎年豊作という事はない。大抵は隔年に多く結実するのが多い。
隔年結実の仕組みは気候は無関係で、筍もそうなのです、「裏」と「表」の年があるらしいのです。それは樹木の生育している場所(地域とか地方とか)ではほぼ全部が同じ傾向を示す。裏年であっても、竹の子が少しは生える、そしてその事は(毎年の手入をしていれば)来年(表年)への大きな期待でもあるのです。

今年の春は、その土地は「裏年」だった。それに別の要素が追い討ちを掛けて、竹の子は殆ど育たなかったそうです。

それは、昨年の塩害の影響だったらしいのです。そして、その土地の来年は「表年」。樹木(竹も樹木の範疇としての事だが)の生命力はそれほど軟弱ではない。
今年の台風襲来による塩害などはものともせず、来年は「大豊作」かも知れないのです。

伐られた竹。
竹の節から生える根は再び地下茎となるために、地中へと潜る。
竹の根に擬態するヒル。

筍:001:たけのこ話2018/10/06 02:51

千葉県夷隅郡大多喜町某所山中(18/09/23)
千葉県夷隅郡大多喜町某所山中(18/09/23)

【筍:001:たけのこ話】#大多喜 #竹の子

筍、たけのこである。筍は、竹の子、タケノコ、笋だったり荀子と表記したりするので、ややこしいのである。
(ややこし序(つい)でに、別物もまぶしておきました、こら)。

数日前から千葉県など太平洋に面している電車が、電線の火事などで運転見合せなどが多発しているらしい。
「塩害」だというのである。強風や台風などで海上から塩水が霧状になって高地にまで吹き上げる。
それが水分となって電気分配施設などに付着する。それが乾燥して、塩分だけが付着して漏電しているのだという。

今年になって(TVなどで放映するからか)、突然発生したかのように思い込まれるが、そうではない。パンタグラフが燃えて電車が止まればさあ大変、判りやすい、そして社会的ニュースとなるが、実は、それ以前に既に竹の子山を見ていれば、予兆はあったという話。

この辺りから、竹の子の話に繋げていきたいのであります。

糸婁 糸侖 (北越雪譜)2018/02/14 22:22

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○糸婁●(いとによる)

 糸に作るにも座を定め体(たい)を囲位(かたむ)る事績(うむ)におなじ。縷●(いとによる)その道具その手術(てわざ)その次第の順、その名に呼物(よぶもの)許多種々(いろ/\さま/”\)あり、繁細(はんさい)の事を詳(つまびらか)にせんはくだ/\しければ言(いは)ず。そも/\うみはじむるよりおりをはるまでの手作(てわざ)すべて雪中に在(あり)、上品に用ふる処の毛よりも細き糸を綴兆舒疾(しゞめたりのべたり)してあつかふ事雪中に籠り居(を)る天然の湿気(しめりけ)を得ざれば為し難し。湿気(しめりけ)を失へば糸折(をれ)る事あり。をれしところ力よわり断(きれ)る事あり。是故(このゆゑ)に上品の糸をあつかふ所は強き火気を近付(ちかづけ)ず。時により織るに後(おくれ)て二月の半(なかば)にいたり暖気を得て雪中の湿気(しつき)薄き時は、大なる鉢(はち)やうの物に雪を盛(もり)て機(はた)の前に置(おき)、その湿気(しつき)をかりて織る事もあり。これらの事に付(つき)て熟思(つら/\おもふ)に、絹(きぬ)を織(おる)には蚕(かひこ)の糸ゆゑ陽熱を好(このみ)、布(ぬの)を織には麻の糸ゆゑ陰冷(いんれい)を好む。さて絹は寒に用ひて温(あたゝか)ならしめ、布は暑(しよ)に用て冷(ひやゝ)かならしむ。是(こ)は天然に陰陽の気運に属(しよく)する所ならんか。件(くだん)の如く雪中に糸となし、雪中に織(お)り、雪水に洒(そゝ)ぎ、雪上に●(さら)す。雪ありて縮あり。されば越後縮は雪と人と気力相半(あひなかば)して名産の名あり。魚沼郡(うをぬまこほり)の雪は縮の親といふべし。蓋(けだ)し薄雪(はくせつ)の地に布(ぬの)の名産あるよしは糸の作りによる事也。越後縮に比べて知るべし。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.63~64)

 ・ ・ ・

 ○糸婁 糸侖(いとによる)

|| 糸に作るにも座を定め体(たい)を囲位(かたむ)る事績(うむ)におなじ。縷●(いとによる)その道具その手術(てわざ)その次第の順、その名に呼物(よぶもの)許多種々(いろ/\さま/”\)あり、繁細(はんさい)の事を詳(つまびらか)にせんはくだ/\しければ言(いは)ず。

 〈糸に仕上げる〉
■ 糸に仕上げる(糸縒り、いとより)場所も決まっていて、姿勢を正してすることは績む作業と同じく言うまでもありません。
糸縒りの道具やその仕方や順序など、それらの道具や作業工程の名前(呼び方)は色々様々にあります。
とてもこまごまするので、ここで書いてもくだくだしくて煩わしいので省略します。

※“糸婁”“糸侖”でそれぞれ一文字。
※(本書説明文より抜粋)
【いとより】苧桶にたぐりこんだ糸を、手代木(てしろぎ)で紡錘(つむ)をすって回転させ、これによって縷(より)をかける工程。

||そも/\うみはじむるよりおりをはるまでの手作(てわざ)すべて雪中に在(あり)、上品に用ふる処の毛よりも細き糸を綴兆舒疾(しゞめたりのべたり)してあつかふ事雪中に籠り居(を)る天然の湿気(しめりけ)を得ざれば為し難し。

 〈織り終るまでの手業全て雪中にあり〉
■紵績(をうみ)から始まって織り上げるまでの工程は全て雪のある冬の季節の手作業なのです。
高級な縮に使用する糸は髪の毛よりも細いのです。
それを〔しじめ〕たり延ばしたりして作業をするので、雪中に篭っている自然の湿り気がないと出来ない作業なのです。

||湿気(しめりけ)を失へば糸折(をれ)る事あり。をれしところ力よわり断(きれ)る事あり。是故(このゆゑ)に上品の糸をあつかふ所は強き火気を近付(ちかづけ)ず。

■その湿り気がないと、糸は途切れてしまったりするのです。
切れた個所は弱くなるので裂けてしまうこともあります。
それなので、上品物の糸を扱う場所では、(暖房の)火の近くなどはもってのほかなのです。

||時により織るに後(おくれ)て二月の半(なかば)にいたり暖気を得て雪中の湿気(しつき)薄き時は、大なる鉢(はち)やうの物に雪を盛(もり)て機(はた)の前に置(おき)、その湿気(しつき)をかりて織る事もあり。

■時によっては、織りの作業が遅れて二月半ばになってしまったりすると、雪の湿気が薄くなったりします。
その時には、大きな鉢のような入れ物に雪を盛って機織(はたおり)機の前に置いて、湿り気の調節をして織ることもあるのです。

||これらの事に付(つき)て熟思(つら/\おもふ)に、絹(きぬ)を織(おる)には蚕(かひこ)の糸ゆゑ陽熱を好(このみ)、布(ぬの)を織には麻の糸ゆゑ陰冷(いんれい)を好む。

 〈糸の陰陽について〉
■これらの事象について、我(京山)熟考するに、絹は陽布は陰、ということじゃな。
絹は蚕の糸(動物性)なので陽熱を好み、布は麻糸(植物性)なので陰冷を好む、と、これでどじゃ。

||さて絹は寒に用ひて温(あたゝか)ならしめ、布は暑(しよ)に用て冷(ひやゝ)かならしむ。是(こ)は天然に陰陽の気運に属(しよく)する所ならんか。

■そして、絹は寒いときに着れば暖かくなり、布は暑いときに着れば涼やかになるのですな。
これは、まさに天然自然の陰陽和合に叶う事ではないか。

||件(くだん)の如く雪中に糸となし、雪中に織(お)り、雪水に洒(そゝ)ぎ、雪上に●(さら)す。

 〈ついでにキャッチフレーズ(笑)〉
■かくの如く、「雪中に糸となし 雪中に織り 雪水に濯ぎ 雪上に晒す」。

※●:“日麗”で一文字。

||雪ありて縮あり。

■ 雪 あ り て 縮 あ り

||されば越後縮は雪と人と気力相半(あひなかば)して名産の名あり。魚沼郡(うをぬまこほり)の雪は縮の親といふべし。

■このように、越後縮は、雪と人と自然の気との調和があってこその名産の名前となるのです。
魚沼郡の雪は、縮の親ともいうべきでしょう。

||蓋(けだ)し薄雪(はくせつ)の地に布(ぬの)の名産あるよしは糸の作りによる事也。越後縮に比べて知るべし。

■たしかに雪の降らない地方でも布の名産地がありますが、それは糸の作り方に依る事でしょう。
このことは、越後縮と比べてみれば一目瞭然に判断がつくことでしょう。



紵績(北越雪譜)2018/02/13 22:03

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○紵績(をうみ)

 余一年(ひとゝせ)江戸に旅宿(りよしゆく)せし頃、或人(あるひと)いうやう、縮(ちゞみ)に用ふる紵(を)を績(うむ)にはその処の婦人誘ひあはせて一家にあつまり、その家にて用ふる紵を績(うみ)たて此人々たがひにその家をめぐりて績(うむ)と聞(きゝ)しがいかにといひき。いかなる人ぞかゝる空言(そらごと)をばいひふらしけん。さりながら魚沼郡一郡も広き事ゆゑ、右やうにする処もあるやらん。たとひありとも、こは下品のちゞみに用ふる紵の事ならん。下品(げひん)の縮の事は姑舎(しばらくおい)て論ぜず、中品以上に用ふるを績(うむ)にはうむ所の座をさだめおき、体(たい)を正しくなし呼吸(こきふ)につれて手を働(はたらか)せて為作(わざ)をなす。定座(ぢやうざ)に居(を)らず仮に居(ゐ)て其為作(わざ)をなせば、おのづから心鎮(しづまら)ずして糸に太細(ふとほそ)いできて用にたちがたし。常並(つねなみ)の人の紵(を)を績(うむ)には唾液(つばしる)を用ふれども、ちゞみの紵績(をうみ)には茶碗やうの物に水をたくはひてこれをもちふ。事毎(ことごと)に盥(てあら)ひ座を清めてこれをなすなり。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.63)

 ・ ・ ・

 ○紵績(をうみ)

|| 余一年(ひとゝせ)江戸に旅宿(りよしゆく)せし頃、或人(あるひと)いうやう、縮(ちゞみ)に用ふる紵(を)を績(うむ)にはその処の婦人誘ひあはせて一家にあつまり、その家にて用ふる紵を績(うみ)たて此人々たがひにその家をめぐりて績(うむ)と聞(きゝ)しがいかにといひき。

 〈紵績 縮に使う紵〉
■ ある年、江戸に滞在していた時のこと、こんな事を尋ねた人がいた。
〈或人〉「縮に使う紵を績む時には、ご近所の女たちがある家に集まってその家で使う分の紵を績みあげて、また別の家に集まって順番にそれらの家の分を績んでしまうと聞いたことがありますが、本当ですか」。

||いかなる人ぞかゝる空言(そらごと)をばいひふらしけん。さりながら魚沼郡一郡も広き事ゆゑ、右やうにする処もあるやらん。たとひありとも、こは下品のちゞみに用ふる紵の事なん。

 〈紵績 縮に使う紵と普通物に使う紵の違い〉
■誰がこんなほら話を言いふらしたのだろう。
魚沼郡は広いので、そのような事をする所もあるのかも知れないが、あったとしてもそれは安物の縮に使う紵のことです。

※もしや、奥會津連か(((^^:。

||下品(げひん)の縮の事は姑舎(しばらくおい)て論ぜず、中品以上に用ふるを績(うむ)にはうむ所の座をさだめおき、体(たい)を正しくなし呼吸(こきふ)につれて手を働(はたらか)せて為作(わざ)をなす。

■商品としないような普段使いの紵績みのことは、さておきましょう。
中等品以上の縮に用いる紵を績むには、作業場所が決められています。
姿勢を正して、呼吸に合わせて手を動かしてはじめて良い糸に績めるのです。

||定座(ぢやうざ)に居(を)らず仮に居(ゐ)て其為作(わざ)をなせば、おのづから心鎮(しづまら)ずして糸に太細(ふとほそ)いできて用にたちがたし。

■その作業場所ではなく仮の場所ですると、気持も落着かないので、糸の太さにばらつきが出てしまうのです。

||常並(つねなみ)の人の紵(を)を績(うむ)には唾液(つばしる)を用ふれども、ちゞみの紵績(をうみ)には茶碗やうの物に水をたくはひてこれをもちふ。事毎(ことごと)に盥(てあら)ひ座を清めてこれをなすなり。

■普段使いの布用の時には唾で湿らせて績みますが、縮用の糸を作るときには茶碗のような器に水を入れて、それで湿らして績みます。
専用の手洗い盥(たらい)の場所で手もきれいにして績むのです。

※(本書説明文より抜粋)
紵績:縮の原料糸をつくるには青苧をぬるま湯にひたしてしめりを与え、少量ずつ口にくわえて右手の爪でその繊維を細くさき、左手でこれを撚(よ)りつないで苧桶(おぼけ)に入れる。
これを【苧績、をうみ】という。



紵(北越雪譜)2018/02/12 20:29

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○紵(を)

 縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.62)

 ・ ・ ・

 ○紵(を)

|| 縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。

 〈〔を〕のこと 原麻の産地〉
■ 縮に使用する素材は会津産または山型県最上地方の紵(糸になる前の〔からむし〕の原麻)を使います。
白い縮(染めないまま)は特に会津産を使用します。
会津産の原麻の中でも、〔影紵(かげそ)〕というものはとびきり極上品です。
また、米沢産の〔撰紵(えりそ)〕という原麻も上品です。
これらの原麻は越後の仲買人が、産地に出掛けていって買取り、魚沼の人に売ります。

※(本書説明文より抜粋)
縮:越後の縮は、麻の一種である苧麻(からむし)の皮をはいでつくった青苧(あおそ)を原料とする。
奥州会津:陸奥国(福島県)会津郡。
出羽最上:出羽国(山形県)最上郡。
影紵(かげそ):二尺から三尺に製苧したもの。優良品が多い。
撰紵(えりそ):かたびらなどを織る良質の麻糸。

||紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。

 〈〔を〕のこと 紵と苧と〉
■紵(を)を魚沼でも〔そ〕といいますが、これは古くからの呼称です。
麻のことを古言で〔そ〕といっているのは、管巻(くだまき)にした状態の物を言います。
麻(あさ)も紵(を)も意味は同じで、布に織る材料としての糸のことを言います。
また、紵(を)を苧(を)とも書きますが、苧(を)は俗字であると辞書には書いてあります。

※(本書説明文より抜粋)
綜麻(へそ):短い管にまきとって、これから織る麻。



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