北越雪譜初編 巻之中
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人百樹 刪定
○紵(を)
縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.62)
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○紵(を)
|| 縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。
〈〔を〕のこと 原麻の産地〉
■ 縮に使用する素材は会津産または山型県最上地方の紵(糸になる前の〔からむし〕の原麻)を使います。
白い縮(染めないまま)は特に会津産を使用します。
会津産の原麻の中でも、〔影紵(かげそ)〕というものはとびきり極上品です。
また、米沢産の〔撰紵(えりそ)〕という原麻も上品です。
これらの原麻は越後の仲買人が、産地に出掛けていって買取り、魚沼の人に売ります。
※(本書説明文より抜粋)
縮:越後の縮は、麻の一種である苧麻(からむし)の皮をはいでつくった青苧(あおそ)を原料とする。
奥州会津:陸奥国(福島県)会津郡。
出羽最上:出羽国(山形県)最上郡。
影紵(かげそ):二尺から三尺に製苧したもの。優良品が多い。
撰紵(えりそ):かたびらなどを織る良質の麻糸。
||紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。
〈〔を〕のこと 紵と苧と〉
■紵(を)を魚沼でも〔そ〕といいますが、これは古くからの呼称です。
麻のことを古言で〔そ〕といっているのは、管巻(くだまき)にした状態の物を言います。
麻(あさ)も紵(を)も意味は同じで、布に織る材料としての糸のことを言います。
また、紵(を)を苧(を)とも書きますが、苧(を)は俗字であると辞書には書いてあります。
※(本書説明文より抜粋)
綜麻(へそ):短い管にまきとって、これから織る麻。
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