別冊 恵比塵
北越雪譜初編 巻之中
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人百樹 刪定
○雪吹(ふゞき) 1/5
雪吹(ふゞき)は樹(き)などに積りたる雪の風に散乱するをいふ。其状(そのすがた)優美(やさしき)ものゆゑ花のちるを是に比して花雪吹(はなふゞき)とすいて古歌(こか)にもあまた見えたり。是東南寸雪(すんせつ)の国の事也。北方丈雪(ぢやうせつ)の国我が越後の雪深(ふかき)ところの雪吹は雪中の暴風(はやて)、雪を巻騰(まきあぐる)?(つぢかぜ)也。雪中第一の難儀これがために死する人年々也。その一ツを挙(あげ)てこゝに記(しる)し、寸雪の雪吹のやさしきを観(みる)人の為に丈雪の雪吹の愕貽(おそしき)を示す。
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○雪吹(ふゞき) 1/5
〈雪吹の寸雪の国と丈雪の国の違いについて〉
|| 雪吹(ふゞき)は樹(き)などに積りたる雪の風に散乱するをいふ。其状(そのすがた)優美(やさしき)ものゆゑ花のちるを是に比して花雪吹(はなふゞき)といひて古歌(こか)にもあまた見えたり。是東南寸雪(すんせつ)の国の事也。
■吹雪は、樹木などに積った雪が風に吹かれて散乱する状態をいいます。
その様は花が散る優しい景色として【花吹雪】などといわれて詩歌にも数知れないほど書かれていますが、
それは暖かい東南の3センチほども積るか積らないかのトカイの話です。
||北方丈雪(ぢやうせつ)の国我が越後の雪深(ふかき)ところの雪吹は雪中の暴風(はやて)、雪を巻騰(まきあぐる)●(つぢかぜ)也。
■北国の3メートルも積る越後の国では、深い雪の場所での吹雪は、暴風で雪を巻き上げる台風のようになるのです。
||雪中第一の難儀これがために死する人年々也。
※●(つぢかぜ):“旋風”のような字。
||その一ツを挙(あげ)てこゝに記(しる)し、寸雪の雪吹のやさしきを観(みる)人の為に丈雪の雪吹の愕貽(おそしき)を示す。
■その例の一つをあげて、寸雪の風流しか見たことの無い人に、丈雪の吹雪がどれだけ恐ろしいかを、ここに書いておきましょう。
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