別冊 恵比塵

雪吹(ふゞき)(北越雪譜)1/52018/01/31 22:33

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○雪吹(ふゞき) 1/5

 雪吹(ふゞき)は樹(き)などに積りたる雪の風に散乱するをいふ。其状(そのすがた)優美(やさしき)ものゆゑ花のちるを是に比して花雪吹(はなふゞき)とすいて古歌(こか)にもあまた見えたり。是東南寸雪(すんせつ)の国の事也。北方丈雪(ぢやうせつ)の国我が越後の雪深(ふかき)ところの雪吹は雪中の暴風(はやて)、雪を巻騰(まきあぐる)?(つぢかぜ)也。雪中第一の難儀これがために死する人年々也。その一ツを挙(あげ)てこゝに記(しる)し、寸雪の雪吹のやさしきを観(みる)人の為に丈雪の雪吹の愕貽(おそしき)を示す。

 ・ ・ ・

 ○雪吹(ふゞき) 1/5
 〈雪吹の寸雪の国と丈雪の国の違いについて〉

|| 雪吹(ふゞき)は樹(き)などに積りたる雪の風に散乱するをいふ。其状(そのすがた)優美(やさしき)ものゆゑ花のちるを是に比して花雪吹(はなふゞき)といひて古歌(こか)にもあまた見えたり。是東南寸雪(すんせつ)の国の事也。

■吹雪は、樹木などに積った雪が風に吹かれて散乱する状態をいいます。
その様は花が散る優しい景色として【花吹雪】などといわれて詩歌にも数知れないほど書かれていますが、
それは暖かい東南の3センチほども積るか積らないかのトカイの話です。

||北方丈雪(ぢやうせつ)の国我が越後の雪深(ふかき)ところの雪吹は雪中の暴風(はやて)、雪を巻騰(まきあぐる)●(つぢかぜ)也。

■北国の3メートルも積る越後の国では、深い雪の場所での吹雪は、暴風で雪を巻き上げる台風のようになるのです。

||雪中第一の難儀これがために死する人年々也。

※●(つぢかぜ):“旋風”のような字。

||その一ツを挙(あげ)てこゝに記(しる)し、寸雪の雪吹のやさしきを観(みる)人の為に丈雪の雪吹の愕貽(おそしき)を示す。

■その例の一つをあげて、寸雪の風流しか見たことの無い人に、丈雪の吹雪がどれだけ恐ろしいかを、ここに書いておきましょう。



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