別冊

白熊(北越雪譜)1/22018/01/20 22:19

北越雪譜初編 巻之上
   越後湯沢 鈴木  牧之 編撰
   江  戸 京山人 百樹 刪定

 ○白熊(しろくま)1/2

 熊の黒(くろき)は雪の白がごとく天然の常なれども、天公(てんこう)機(き)を転じて白熊(はくいう)を出せり。
 天保三年辰の春、我が住(すむ)魚沼郡(うをぬまこほり)の内浦佐(うらさ)宿の在(ざい)大倉村の樵夫(きこり)八海山に入りし時、いかにしてか白き児熊(こくま)を虜(いけど)り、世に珍(めづらし)とて飼(かひ)おきしに香具師(かうぐし) 江戸にいふ見世もの師の古風なるもの これを買もとめ、市場又は祭礼、すべて人の群(あつま)る所へいでゝ看物(みせもの)にせしが、ある所にて余(よ)も見つるに大さ狗(いぬ)のごとく状(かたち)は全く熊にして、白毛雪を欺きしかも光沢(つや)ありて天鵞織(びらうど)のごとく眼と爪は紅(くれなゐ)也。よく人に馴(なれ)てはなはだ愛(あいす)べきもの也。こゝかしこに持あるきしがその終(おはり)をしらず。白亀の改元、白鳥の神瑞、八幡の鳩、源家の旗、すべて白きは 皇国(みくに)の祥象(しやうせう)なれば、天機(てんき)白熊(はくいう)をいだしも 昇平万歳(しようへいばんぜい)の吉瑞(ずゐ)成へし。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.30)

 ○白熊(しろくま)1/2

|| 熊の黒(くろき)は雪の白がごとく天然の常なれども、天公(てんこう)機(き)を転じて白熊(はくいう)を出せり。

■ 熊が黒いのは雪が白いのと同じくらい当り前のことですが、天の気まぐれは白い熊を生れさせることもあるのです。

|| 天保三年辰の春、我が住(すむ)魚沼郡(うをぬまこほり)の内浦佐(うらさ)宿の在(ざい)大倉村の樵夫(きこり)八海山に入りし時、いかにしてか白き児熊(こくま)を虜(いけど)り、世に珍(めづらし)とて飼(かひ)おきしに香具師(かうぐし) 江戸にいふ見世もの師の古風なるもの これを買もとめ、市場又は祭礼、すべて人の群(あつま)る所へいでゝ看物(みせもの)にせしが、ある所にて余(よ)も見つるに大さ狗(いぬ)のごとく状(かたち)は全く熊にして、白毛雪を欺きしかも光沢(つや)ありて天鵞織(びらうど)のごとく眼と爪は紅(くれなゐ)也。

■ 天保三(1832)年の春、わたし(牧之)が住んでいる魚沼郡のことです。
浦佐宿のはずれの大巻村に住む樵(きこり)が八海山で、どうやって捕まえたかは判らないが白い小熊を生捕ったことがありました。
珍しいので飼っていたら香具師(やし)が買い取った。
市の立つ日や祭礼日など人の集まる所で見世物にした。
ある場所で、現物を見たが犬ぐらいの大きさで形はまったく熊である。
白い毛は雪のように白くて光沢があってビロード(天鵞絨)のようです。
目と爪は紅色(ピンク?)でした。

||よく人に馴(なれ)てはなはだ愛(あいす)べきもの也。こゝかしこに持あるきしがその終(おはり)をしらず。

■人にはなれていてとても可愛いものでした。あちこちに移動して商売としていたがその顛末は聞かない。

||白亀の改元、白鳥の神瑞、八幡の鳩、源家の旗、すべて白きは 皇国(みくに)の祥象(しやうせう)なれば、天機(てんき)白熊(はくいう)をいだしも 昇平万歳(しようへいばんぜい)の吉瑞(ずゐ)成へし。

■白といえば往古の事蹟でも「白亀の改元」「白鳥の神瑞」「八幡の鳩」「源氏の白旗」などなと。
白は、日本のめでたいしるしなので、白熊も天の贈り物で、長く平和が続く吉祥の兆しであろう。

※そういえば、奥羽国大沼郡野尻村中津川の白熊も熊野神社の瑞祥のいわれ(由緒)だったような。



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