熊捕(北越雪譜)2/7 ― 2018/01/18 01:15
熊捕(北越雪譜)2/7
北越雪譜初編 巻之上
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人 百樹 刪定
○熊捕(くまとり) 2/7
此者らが志(こゝろざす)所は我国の熊にあり。さて我山中に入り場所よきを見立(みたて)、木の枝藤蔓を以て仮に小屋を作りこれを居所(ゐどころ)となし、おの/\犬を索(ひき)四方に別(わかれ)て熊を窺(うかゞ)ふ。熊の穴居(こもり)たる所を認(みつくれ)ば目幟(めじるし)をのこして小屋にかへり、一連の力を併(あはせ)て、これを捕る。その道具(だうぐ)は柄(え)の長さ四尺斗りの手鎗(てやり)、或は山刀(やまがたな)を薙刀(なぎなた)のごとくに作りあるもの、鉄炮(てつはう)山刀斧(をの)の類(るゐ)也。刃鈍る時は貯へたる砥(と)をもつて、自(みづから)研(と)ぐ。此道具も獣皮を以て鞘となす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
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○熊捕(くまとり) 2/7
〈熊を捕る手順と、マタギの道具〉
||此者らが志(こゝろざす)所は我国の熊にあり。
■よそから来るマタギの目的は、この地方の熊です。
||さて我山中に入り場所よきを見立(みたて)、木の枝藤蔓を以て仮に小屋を作りこれを居所(ゐどころ)となし、おの/\犬を索(ひき)四方に別(わかれ)て熊を窺(うかゞ)ふ。
■山中に入り込むと、よさそうな場所を見立てると、
木の枝や藤蔓(フジヅル)で仮小屋を建てて、ベースキャンプを張ります。
各人は犬を連れて四方に分担して、熊の居そうな場所を探します。
||熊の穴居(こもり)たる所を認(みつくれ)ば目幟(めじるし)をのこして小屋にかへり、一連の力を併(あはせ)て、これを捕る。
■穴ごもり(冬眠)の場所を見つけると、
その場所に目印の幟旗を立てて一旦根拠地(ベースキャンプ)に戻ります。
その上で、全員が総出で協力して熊を捕るのです。
||その道具(だうぐ)は柄(え)の長さ四尺斗りの手鎗(てやり)、或は山刀(やまがたな)を薙刀(なぎなた)のごとくに作りあるもの、鉄炮(てつはう)山刀斧(をの)の類(るゐ)也。
■熊を捕る道具は、柄の長さ1.2メートルほどの【手鎗(てやり)】。
または鉈(なた、山刀)を長刀(なぎなた)のように製作した道具。
そして鉄砲や斧(おの)などを武器にします。
||刃鈍る時は貯へたる砥(と)をもつて、自(みづから)研(と)ぐ。此道具も獣皮を以て鞘となす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
■刃が鈍ってきた時は、携帯している砥石を使って砥ぎます。
砥石の鞘(さや、ケース)も皮で作ってあります。
これらの人びとは、春に限らず冬の最中でも山に入っていることもあります。
熊捕(北越雪譜)3/7 ― 2018/01/18 01:36
北越雪譜初編 巻之上
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人 百樹 刪定
○熊捕(くまとり) 3/7
そも/\熊は和獣の王、猛(たけ)くして義を知る。菓(このみ)木の皮虫のるゐを食として同類の獣(けもの)を喰(くらは)ず。田圃(たはた)を荒(あらさ)ず。稀に荒すは食の尽(つき)たる時也。詩経(しきやう)には男子の祥(しやう)とし、或は六雄将軍(りくゆうしやうぐん)の名を得たるも義獣(ぎじう)なればなるべし。夏は食をもとむるの外(ほか)山蟻(やまあり)を掌中(てのひら)に擦着(すりつけ)、冬の蔵蟄(あなごもり)にはこれを舐(なめ)て飢を凌ぐ。牝牡同(おなじ)く穴に蟄(こも)らず。牝のあるは子とおなじくこもる。此蔵蟄する所は大木の雪頽(なだれ)に倒(たふ)れて朽(くち)たる洞(うろ) なだれの事下にしるす 又は岩間(いはのあひ)土穴(つちあな)、かれが心に随(したがつ)て居(を)る処さだめがたし。雪中の熊は右のごとく他食(たしよく)を求(もとめ)ざるゆゑ、その胆(きも)の良功(りやうこう)ある事夏の胆に比(くらぶ)れば百倍也。我国にては飴胆(あめい)・琥珀胆(こはくい)・黒胆(くろい)と唱へ色をもつてこれをいふ。琥珀を上品とし黒胆を下品とす。偽物(ぎぶつ)は黒肝に多し。
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○熊捕(くまとり) 3/7
〈熊の性質と熊掌、熊胆のこと〉
|| そも/\熊は和獣の王、猛(たけ)くして義を知る。
■古来、日本では熊は国内の獣の王でもありました。
それは、強く勇敢であり、義理を知る動物なのです。
||菓(このみ)木の皮虫のるゐを食として同類の獣(けもの)を喰(くらは)ず。田圃(たはた)を荒(あらさ)ず。稀に荒すは食の尽(つき)たる時也。
■主食は木の実や木の皮の下にいる虫などで、動物は食べません。
人の住んでいる里山を荒らしません。たまに荒らしてしまうのは山に食物が尽きてしまった時なのです。
||詩経(しきやう)には男子の祥(しやう)とし、或は六雄将軍(りくゆうしやうぐん)の名を得たるも義獣(ぎじう)なればなるべし。
■『詩経』には「男子の祥」とされています。
また、別名、六雄将軍という名前を持っているのも、義のある獣であることからです。
||夏は食をもとむるの外(ほか)山蟻(やまあり)を掌中(てのひら)に擦着(すりつけ)、冬の蔵蟄(あなごもり)にはこれを舐(なめ)て飢を凌ぐ。
■夏の間は食べ物を探すことのほかには、山蟻の巣を見つけて手のひらに擦り着けます。
そして冬の穴ごもり中は、その掌を舐めて飢えを凌ぐというのです。
||牝牡同(おなじ)く穴に蟄(こも)らず。牝のあるは子とおなじくこもる。
■熊はオスとメスが同じ穴に入ってこもる事(冬眠する)はありません。
また子どものいるメス熊は、小熊と一緒に冬眠します。
||此蔵蟄する所は大木の雪頽(なだれ)に倒(たふ)れて朽(くち)たる洞(うろ) なだれの事下にしるす 又は岩間(いはのあひ)土穴(つちあな)、かれが心に随(したがつ)て居(を)る処さだめがたし。
■熊の穴倉は、雪崩に倒されて枯れてしまった大木の洞(うろ)や、岩の間、土の穴など。
熊の都合で決めるので、人が寝所を特定することは出来ないのです。
(※雪崩の事は、別章を参照のこと)
||雪中の熊は右のごとく他食(たしよく)を求(もとめ)ざるゆゑ、その胆(きも)の良功(りやうこう)ある事夏の胆に比(くらぶ)れば百倍也。
■冬眠中の熊は前述の様に、摂食をしないので、熊胆(くまのい)はとても良い効目のある薬となるのです。
夏の間に取った熊胆と較べるとその薬効は百倍も誓うのです。
||我国にては飴胆(あめい)・琥珀胆(こはくい)・黒胆(くろい)と唱へ色をもつてこれをいふ。琥珀を上品とし黒胆を下品とす。偽物(ぎぶつ)は黒肝に多し。
■越後の国では、飴胆(あめい)・琥珀胆(こはくい)・黒胆(くろい)と、色の違いで呼び方が変わります。
その中で、琥珀胆が上、黒胆は下とランク付けられます。
熊胆の偽物は、黒肝が多いです。
熊捕(北越雪譜)4/7 ― 2018/01/18 21:41
北越雪譜初編 巻之上
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人 百樹 刪定
○熊捕(くまとり) 4/7
さて熊を捕(とる)に種々の術あり。かれが居(をる)所の地理にしたがつて捕(とり)得(ゑ)やすき術をほどこす。熊は秋の土用より穴に入り、春の土用に穴より出(いづ)るといふ。又一説に穴に入りてより穴を出るまで一睡(ひとねむり)にねむるといふ。人の視ざるところなれば信じがたし。
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○熊捕(くまとり) 4/7
〈熊を捕る方法〉
|| さて熊を捕(とる)に種々の術あり。かれが居(をる)所の地理にしたがつて捕(とり)得(ゑ)やすき術をほどこす。
■ 熊の捕り方には色々な方法があります。
その方法は、熊の穴の地形を観察して、それぞれ捕り易い方法を決めます。
||熊は秋の土用より穴に入り、春の土用に穴より出(いづ)るといふ。又一説に穴に入りてより穴を出るまで一睡(ひとねむり)にねむるといふ。人の視ざるところなれば信じがたし。
■熊は、秋の土用に穴に入って、春の土用に穴から出てくる、と謂われます。
また、穴に入ってから出てくるまで、寝たら起きないというのです。
これは人が見た訳でも(熊に聞いた訳でも)無いので、にわかに信じ難い。
熊捕(北越雪譜)5/7 ― 2018/01/18 21:44
北越雪譜初編 巻之上
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人 百樹 刪定
○熊捕(くまとり) 5/7
沫雪の条(くだり)にいへるごとく、冬の雪は軟(やはら)にして足場あしきゆゑ、熊を捕(とる)は雪の凍(こほり)たる春の土用まへ、かれが穴よりいでんとする頃を程よき時節とする也。岸壁の裾又は大樹の根などに蔵蟄たるを捕には、圧(おし)といふ術を用ふ。天井釣(てんじやうづり)ともいふ。その制作(しかた)は木の枝藤の蔓にて穴に倚掛(よせかけ)て棚を作り、たなの端は地に付て杭を以てこれを縛り、たなの横木に柱ありて棚の上に大石を積(つみ)ならべ、横木より縄を下し縄に輪を結びて穴に臨(のぞま)す、これを蹴綱(けづな)といふ。この蹴綱に転機(しかけ)あり。全く作りをはりてのち、穴にのぞんで玉蜀(たうがらし)烟草(たばこ)の茎のるゐ熊の悪(にく)む物を焚(たき)、しきりに扇(あふぎ)て烟(けふり)を穴に入るれば熊烟りに噎(むせ)て大に怒り穴を飛出る時、かならずかの蹴綱に触(ふる)れば転機(しかけ)にて棚落て熊大石の下に死す。手を下さずして熊を捕(とる)の上術也。是は熊の居所による也。これらは樵夫(せうふ)も折(をり)によりてはする事也。
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○熊捕(くまとり) 5/7
〈熊を捕る方法 圧(おし)・天井釣(てんじやうづり)〉
|| 沫雪の条(くだり)にいへるごとく、冬の雪は軟(やはら)にして足場あしきゆゑ、熊を捕(とる)は雪の凍(こほり)たる春の土用まへ、かれが穴よりいでんとする頃を程よき時節とする也。
■ 沫雪の章でも書いたように、真冬の雪は軟らかい(固まらない)ので、野良では歩行困難です。
熊を捕る時節は、雪が硬雪(かたゆき)となる春の土用の頃です。
ちょうど熊が穴から出てくる頃と同じなのです。
http://yebijin.asablo.jp/blog/2018/01/10/8767201
||岸壁の裾又は大樹の根などに蔵蟄たるを捕には、圧(おし)といふ術を用ふ。天井釣(てんじやうづり)ともいふ。
■岩の下の洞や大木の根っこの穴などで冬眠している熊を捕るときには、【圧(おし)】という方法をとります。
これを【天井釣(てんじょうつり)】とも呼んでいます。
||その制作(しかた)は木の枝藤の蔓にて穴に倚掛(よせかけ)て棚を作り、たなの端は地に付て杭を以てこれを縛り、たなの横木に柱ありて棚の上に大石を積(つみ)ならべ、横木より縄を下し縄に輪を結びて穴に臨(のぞま)す、これを蹴綱(けづな)といふ。
■その作り方は、木の枝や藤蔓を使って、穴の出口に被るように棚を作ります。
棚の端は地面に着くようにして、杭で縛り付けます。
棚の横木は柱で支えて、棚の上には大きな石を積んでおきます。
横木から縄を垂らして、その先は輪にして穴の真正面に設置します。
この縄を【蹴綱(けづな)】といいます。
||この蹴綱に転機(しかけ)あり。全く作りをはりてのち、穴にのぞんで玉蜀(たうがらし)烟草(たばこ)の茎のるゐ熊の悪(にく)む物を焚(たき)、しきりに扇(あふぎ)て烟(けふり)を穴に入るれば熊烟りに噎(むせ)て大に怒り穴を飛出る時、かならずかの蹴綱に触(ふる)れば転機(しかけ)にて棚落て熊大石の下に死す。
■この蹴綱に仕掛けがあるのです。
こうして装置が完成したら、穴の中へ向けて、トウガラシ(玉蜀)やタバコ(烟草)の茎など、熊の嫌う物を燃やします。
扇いでその煙を穴に入るようにします。
熊はその煙に咽かえり吃驚して穴から飛び出てきます。
その時に確実に蹴綱を引っ掛けて引っぱってしまうと、棚が崩れるカラクリになっていて、熊は大きな石の下に悶絶することになります。
||手を下さずして熊を捕(とる)の上術也。是は熊の居所による也。これらは樵夫(せうふ)も折(をり)によりてはする事也。
■直接に熊に手を掛けないで取る上手い方法です。
これは熊が誂え向きの場所にいる場合の話です。
この方法は、樵(きこり)も機会があるとこの方法を使います。
熊捕(北越雪譜)6/7 ― 2018/01/18 21:49
○熊捕(くまとり) 6/7
又熊捕の場数を踏(ふみ)たる剛勇の者は一連の猟師を熊の居る穴の前に待(また)せ、己一人【ひろゝ蓑(みの)】を頭(かしら)より被り ひろゝは山にある草の名也、みのに作れば稿よりかろし、猟師常にこれを用ふ 穴にそろ/\と這入り、熊に蓑の毛を触(ふる)れば、熊はみのゝ毛を嫌ふものゆゑ除(よけ)て前にすゝむ。又後(しりへ)よりみの毛を障(さはら)す、熊又まへにすゝむ。又さはり又すゝんで熊終(つひ)には穴の口にいたる。これを視て待(まち)かまへたる猟師ども手練の槍先にかけて突留(つきとむ)る。一槍失(あやまつ)ときは熊の一掻(ひとかき)に一命を失ふ。その危(あやふさ)を踏(ふん)で熊を捕は僅(わづか)の黄金(かね)の為也。金欲の人を過(あやまつ)事色欲(しきよく)より甚(はなはだ)し。されば黄金(わうごん)は道を以て得(う)べし、不道をもつて得べからず。
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○熊捕(くまとり) 6/7
〈熊を捕る方法 ヒロロの蓑でくすぐる方法〉
|| 又熊捕の場数を踏(ふみ)たる剛勇の者は一連の猟師を熊の居る穴の前に待(また)せ、己一人【ひろゝ蓑(みの)】を頭(かしら)より被り ひろゝは山にある草の名也、みのに作れば稿よりかろし、猟師常にこれを用ふ 穴にそろ/\と這入り、熊に蓑の毛を触(ふる)れば、熊はみのゝ毛を嫌ふものゆゑ除(よけ)て前にすゝむ。
■ 熊捕りの達人になると、ヒロロの蓑(みの)でくすぐって穴から出すという。
勇ましいベテランは、他の猟師を穴の前方に待機させて、一人でヒロロの蓑を頭から被って、そろりそろりと穴に入ります。
熊を蓑の毛で触ると、熊はそれを嫌がって避けようとして前に進むのです。
ヒロロで作った蓑は藁で作ったものよりも軽くて、猟師はこれを常用している。
※ヒロロ
この本の注釈には、ミヤマカンスゲとも明記している。
||又後(しりへ)よりみの毛を障(さはら)す、熊又まへにすゝむ。又さはり又すゝんで熊終(つひ)には穴の口にいたる。これを視て待(まち)かまへたる猟師ども手練の槍先にかけて突留(つきとむ)る。
■奥から蓑の毛で(おそらく逆毛状に)ざわっと突付くと、熊はまた前に動く。
また触る、また動く、と熊は穴の入口まで動いてしまうのです。
これを見て待ち構えていた猟師たちが、なれた手わざの槍先で仕留めるのです。
||一槍失(あやまつ)ときは熊の一掻(ひとかき)に一命を失ふ。その危(あやふさ)を踏(ふん)で熊を捕は僅(わづか)の黄金(かね)の為也。
■一番槍が失敗でもしたら、熊の一掻きで自分の命を失うのです。
それだけの危険を承知でも熊捕りをするのは、なにがしかのお金を得る為なのです。
||金欲の人を過(あやまつ)事色欲(しきよく)より甚(はなはだ)し。されば黄金(わうごん)は道を以て得(う)べし、不道をもつて得べからず。
■金銭欲が人を不幸にすることは色欲よりも甚だしいことなのですね。
金は正しい方法で得るべきなのです、不正な方法で儲けてはいけないのです。
※この段、おそらく猟師の無謀さを非難しているのではないのです。
それほどにしても金が必要な猟師生活を憐れんでいるのだと思います。
熊捕(北越雪譜)7/7 ― 2018/01/18 21:52
北越雪譜初編 巻之上
越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
江 戸 京山人 百樹 刪定
○熊捕(くまとり) 7/7
又上に覆ふ所ありてその下には雪のつもらざるを知り、土穴を掘(ほり)て蟄(こも)るもあり。然れどもこゝにも雪三五尺は吹積(ふきつもる)也。熊の穴ある所の雪にはかならず細孔(ほそきあな)ありて管(くだ)のごとし。これ熊の気息(いき)にて雪の解(とけ)たる孔(あな)也。猟師これを見れば雪を掘て穴をあらはし、木の枝柴のるゐを穴に挿(さし)入れば熊これを掻とりて穴に入るゝ、かくする事しば/\なれば穴逼(つま)りて熊穴の口にいづる時槍にかくる。突(つき)たりと見れば数疋(すひき)の猛犬(つよいぬ)いちどに飛かゝりて噛(かみ)つく。犬は人を力とし、人は犬を力として殺(ころす)もあり。此術は控木(うつほ)にこもりたるにもする事也。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.27~30)
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○熊捕(くまとり) 7/7
〈熊を捕る方法 熊の息穴を見つける〉
|| 又上に覆ふ所ありてその下には雪のつもらざるを知り、土穴を掘(ほり)て蟄(こも)るもあり。然れどもこゝにも雪三五尺は吹積(ふきつもる)也。
■ 地上が覆いのようになっていてその下には雪が降っていないので、その地面を掘って冬眠する熊もいます。
しかし、その場所も吹雪いた雪で1メートル以上の積雪にもなってしまうのです。
||熊の穴ある所の雪にはかならず細孔(ほそきあな)ありて管(くだ)のごとし。これ熊の気息(いき)にて雪の解(とけ)たる孔(あな)也。
■こういう場所には必ず雪面に細い穴があいています。
これは、熊の呼吸で雪が溶けて空気穴の様になっているのです。
||猟師これを見れば雪を掘て穴をあらはし、木の枝柴のるゐを穴に挿(さし)入れば熊これを掻とりて穴に入るゝ、かくする事しば/\なれば穴逼(つま)りて熊穴の口にいづる時槍にかくる。
■猟師はこれを見つけると、雪を掘って地面の熊の穴が見えるようにします。
柴木などの木の枝を穴に差し込むと、熊はそれを穴に掻き入れてしまいます。
これを何度か繰り返すと、穴の中が一杯になって熊は穴の入口まで出て来てしまうのです。
そのタイミングを狙って槍で突くのです。
||突(つき)たりと見れば数疋(すひき)の猛犬(つよいぬ)いちどに飛かゝりて噛(かみ)つく。犬は人を力とし、人は犬を力として殺(ころす)もあり。此術は控木(うつほ)にこもりたるにもする事也。
■槍で突くとたん、それが合図となって数匹の猟犬が一気に襲い掛かって噛み付きます。
犬と人との阿吽の呼吸、共同作業で熊を殺すのです。
この方法は、木の洞(うつおぎ、空木)に篭っている時にも使う方法です。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.27~30)
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