別冊

縮の種類(北越雪譜)1/22018/02/12 00:24

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○縮(ちゞみ)の種類(しゆるゐ)1/2

 魚沼郡の内にて縮をいだす事一様ならず、村によりて出(いだ)せ品(しな)にさだめあり。こは自(おのづか)らむかしより其品(しな)にのみ熟練して他(ほか)の品に移らざるゆゑ也。其所その品を産(いだ)す事左のごとし。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.61~62)

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 ○縮(ちゞみ)の種類(しゆるゐ)1/2

|| 魚沼郡の内にて縮をいだす事一様ならず、村によりて出(いだ)せ品(しな)にさだめあり。こは自(おのづか)らむかしより其品(しな)にのみ熟練して他(ほか)の品に移らざるゆゑ也。其所その品を産(いだ)す事左のごとし。

 〈魚沼郡内の村ごとのおきて〉
■ “ちぢみ”と総称していますが、魚沼郡内で全部同じではありません。
村によって、その村独自の制作方法が定まっているのです。
これは、むかしから同じ品物だけを作ることに習熟してきて、他の品物に目移りしなかったからです。
それぞれの名前と、産出する組と村は以下のようになります。



縮の種類(北越雪譜)2/22018/02/12 00:28

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○縮(ちゞみ)の種類(しゆるゐ)2/2

||▲白縮は堀の内町在(ざい)の村々-これを堀の内組といふ-又浦佐(うらさ)組小出嶋(こでじま)組の村々▲模様るゐ或は飛白(かすり)、いはゆる藍錆(あゐさび)といふは塩沢(しほざわ)組の村々 ▲藍●(あゐじま)は六日町組の村々 ▲紅桔梗縞(べにききやうしま)のるゐは小千谷(をぢや)組の村々 ▲浅黄織(あさぎじま)のるゐは十日町組の村々也。又紺の弁慶縞(べんけいじま)は高柳郷(たかやなぎごう)にかぎれり。右いづれも魚沼一郡の村々也。此余(よ)ちゞみを出(いだ)す所二三ケ所あれど、専らにせざればしばらく舎(おき)てしるさず。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.62)

■〈名前と主な組(村)〉
【白縮】堀の内組(堀の内村を中心に二十九村)、浦佐組(浦佐村を中心に五十四村)、小出嶋組(小出島村を中心に三十九村)。
【模様類または絣】いわゆる【藍錆】は塩沢組(塩沢を中心に五十八村)。
【藍●(あいじま)】六日町組(六日町村を中心に六十六村)。●は、“糸”と”浸”の右側ぶ一文字。
【紅桔梗縞】小千谷組(小千谷を中心に三十八村)。
【浅黄織】十日町組(十日町村を中心に十九村)。
【紺の弁慶縞】高柳郷限定(高柳郷は魚沼郡の隣の郷)。

||縮は右村里の婦女(ふじよ)らが雪中に籠(こも)り居(を)る間(あひだ)の手業(てわざ)也。およそは来年売(うる)べきちゞみを、ことしの十月より糸をうみはじめて次の年二月なかばに晒しをはる。

 〈製作の季節〉
■縮といわれる品は上記の各村里(集落)の女性の冬中の手作業で作ります。
来年に売る分だけの縮を作ります。
十月から糸績みを始めて、翌年二月半ば迄には織り終えて、晒し上げます。

||白縮はうち見たる所はおりやすきやうなれば、たゞ人は文(あや)あるものほどにはおもはざれども、手練(しゆれん)はよく見ゆるもの也。村々の婦女たちがちゞみに丹精を尽す事なか/\小冊(さつ)には尽しがたし、其あらましを下に記(しる)せり。

 〈手練の技術〉
■例えば、白縮などは、傍目にみると織り易そうに見えます。
知らない人は、模様のあるほどには難しくないだろうと思うかもしれませんが、
その織りの素晴らしさは織った手練の結果としてよく見えるのです。
村々の機織女たちがどれほどの丹精を尽くすかの説明は、一冊の本では書ききれません。
その概略については、次節以降に書いていきます。

※意訳少し無理ありかも(掲載子)。次の章からはもっと恐い(笑)。



紵(北越雪譜)2018/02/12 20:29

北越雪譜初編 巻之中
   越後湯沢 鈴木 牧之 編撰
   江  戸 京山人百樹 刪定

 ○紵(を)

 縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。
「校註 北越雪譜」野島出版より(P.62)

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 ○紵(を)

|| 縮に用ふる紵(を)は奥州会津(おうしうあひづ)出羽最上(ではもがみ)の産を用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵(かげそ)といふもの極品(ごくひん)也。また米沢の撰紵(えりそ)と称するも上品也。越後の紵商人(をあきんど)かの国にいたりて紵をもとめて国に売る。

 〈〔を〕のこと 原麻の産地〉
■ 縮に使用する素材は会津産または山型県最上地方の紵(糸になる前の〔からむし〕の原麻)を使います。
白い縮(染めないまま)は特に会津産を使用します。
会津産の原麻の中でも、〔影紵(かげそ)〕というものはとびきり極上品です。
また、米沢産の〔撰紵(えりそ)〕という原麻も上品です。
これらの原麻は越後の仲買人が、産地に出掛けていって買取り、魚沼の人に売ります。

※(本書説明文より抜粋)
縮:越後の縮は、麻の一種である苧麻(からむし)の皮をはいでつくった青苧(あおそ)を原料とする。
奥州会津:陸奥国(福島県)会津郡。
出羽最上:出羽国(山形県)最上郡。
影紵(かげそ):二尺から三尺に製苧したもの。優良品が多い。
撰紵(えりそ):かたびらなどを織る良質の麻糸。

||紵(を)を此国にても〔そ〕といふは古言(こげん)也。麻(あさ)を古言に〔そ〕といひしは綜麻(へそ)のるゐ也。麻も紵(を)も字義はおなじく布に織るべき料(れう)の糸をいふ也。紵(を)を苧(を)に作るは俗(ぞく)也と字書に見えたり。

 〈〔を〕のこと 紵と苧と〉
■紵(を)を魚沼でも〔そ〕といいますが、これは古くからの呼称です。
麻のことを古言で〔そ〕といっているのは、管巻(くだまき)にした状態の物を言います。
麻(あさ)も紵(を)も意味は同じで、布に織る材料としての糸のことを言います。
また、紵(を)を苧(を)とも書きますが、苧(を)は俗字であると辞書には書いてあります。

※(本書説明文より抜粋)
綜麻(へそ):短い管にまきとって、これから織る麻。



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